蒼い鳥1(アイジ×潤)
2004年6月13日 ピエロ同人注意:ピエロ同人。つまりホモ話です。嫌いな人は避けてください。
* * * * *
ずっと探していた
僕だけの蒼い鳥
君を見た瞬間
見つけた、と思ったんだ
* * * * *
「すみません、あのっ・・・」
突然話し掛けた僕は当然怪しかったはずで。
でも訝しげな顔の貴方を見て本当に綺麗だと思った。
「モデル、やりませんか・・・?」
* * * * *
僕の父親はモデルのプロダクションを経営している。
僕の母親は昔トップモデルだったらしい。
僕は母親のことを知らない。
僕を産む時に彼女は死んでしまったから。
父親の手伝いで子供のときから時々モデルをやってた。
自分でいうのもなんだけど、母親譲りの白い肌に優しい印象を与える瞳で、本格的にモデルやっていってもいけるとは思う。
でも僕は父親の血のほうが濃いようで。
いつからか自分の理想のモデルを捜し求めるようになっていた。
それはまるで蒼い鳥を探すような感覚。
存在しないと思っていた。
僕の理想そのもの、なんて―――。
「潤くん!潤くん!」
ばたばたと騒がしくこちらに近寄ってくるのが僕の蒼い鳥、アイジ。
外見はまさに僕の理想通り。
細く長い手足に大きな瞳。「綺麗」という表現が一番合う。
ただあくまで外見のこと。
性格は・・・一言で言えば「子供」だ。
「俺ねー、筋がいいって誉められた」
綺麗な顔をくしゃくしゃにして本当に嬉しそうに笑うアイジ。
思わず髪の毛をわしゃわしゃと撫でてやりたくなる。
でもせっかく綺麗にセットされた髪を台無しにしてしまうわけにはいかない。
「当然でしょう。僕が選んだモデルなんだから」
灰皿を引き寄せ、煙草の灰を落とす。
「でもあのカメラマンさん、あんまり誉めない人なんだよ。すごいね、アイジ」
そう言って微笑んだ僕に、アイジは飛びついてきた。
「ありがとう、潤くん!」
「ちょっ・・・危ないだろ!」
「俺、撮影の続きやってくる!終わるまで待っててねー!!」
そう言うとアイジはまたばたばたと走り去っていってしまった。
ほ、と安堵の息をつき、煙草の火を消す。
モデルが火傷でもしたら大変だ。
「犬みたいだよなぁ・・・」
呟いて、くくく、と笑う。
外見はもちろん、あの性格だって嫌いじゃなかった。
* * * * *
アイジは持ち前の人懐っこさで、どんどんモデル業界でも顔を広げていった。
僕はほぼアイジのマネージャーになっている。
今は何よりこの仕事が楽しかった。
コンコン。
軽くドアをノックする。
「潤です」
『入れ』
「失礼します」
僕はドアを開けて「社長室」と書かれた部屋に入った。
当然そこには僕の父が座っている。
だがここ数年、父とは仕事以外での付き合いはしていなかった。
「ご用事があると伺いましたが・・・」
「ああ、この仕事をお前のモデルに頼みたいと思ってな」
そう言い、1枚の書類が僕に渡される。
それは有名ブランドの専属モデルの話だった。
悪くない話だ。むしろアイジにとってはモデルとしての地位を確立するまたとない機会だ。
だが、僕は何故かすぐに返事をすることができなかった。
「・・・何か不都合でもあるか?」
「ない、です・・・」
マネージャーが僕でなくなること以外は。
僕はその言葉をぐっと飲み込んだ。
仕事に私情は挟むべきではない。
アイジはもう僕だけの蒼い鳥ではないんだ。
「じゃあ、さがれ」
「失礼します・・・」
そんなこと、はじめから理解っていたはずなのに。
いつの間に僕はアイジを手に入れた気になっていたのだろう?
それから数日間は大変だった。
アイジが僕がマネージャーをやらないと仕事を受けないと言い張ったのだ。
勿論そんな我儘が仕事上において通用するはずがない。
それに理由が無かった。僕でならない理由が。
ほぼ絶縁に近い状態で僕の仕事は終わった。
* * * * *
蒼い鳥を
「理由ならあるよ!潤くんじゃいけない理由なら!」
「なんだよ、言ってみろよ?!」
「だから、それはっ・・・!!」
「言えないじゃないか。そんなのは理由にならないんだ!」
「潤くん!!」
逃がしちゃったよ・・・
* * * * *
しばらくは何もせずに過ごしていた気がする。
すでにモデルの仕事は手放していたし、特にマネージメントしたいと思えるほどのモデルにも出会えなかった。
街中でアイジのポスターを見つけては、その強い瞳から逃げるように目を背けた。
だって何と言えばいい?
この感情に名前をつけられるか?
つけたとしたら、それは・・・。
アイジの未来をも犠牲にすることになる。
僕は広い空へ飛び立つ蒼い鳥を見上げているだけでいい。
もう二度と僕の空へ戻ってこなくても。
「何ですか?社長」
「その中から、ひとり選べ」
デスクの上に散りばめられた写真たち。
その中で笑う、人、人、人。
「僕にマネージメントをしろ、と?」
「そうだ」
「・・・こんなの・・・」
だんっ!
僕は叩くようにして写真を床に投げ捨てた。
「アイジに比べたらゴミ以下だ」
そのまま部屋を飛び出す。
「潤!!」
わかってる。
仕事に私情は挟んじゃいけない。
わかってる。
アイジは僕だけの蒼い鳥じゃない。
わかってる。
僕はアイジのことを・・・。
「・・・すき、だって・・・」
わかってる。
何故だか涙が止まらなかった。
<NEXT>
* * * * *
ずっと探していた
僕だけの蒼い鳥
君を見た瞬間
見つけた、と思ったんだ
* * * * *
「すみません、あのっ・・・」
突然話し掛けた僕は当然怪しかったはずで。
でも訝しげな顔の貴方を見て本当に綺麗だと思った。
「モデル、やりませんか・・・?」
* * * * *
僕の父親はモデルのプロダクションを経営している。
僕の母親は昔トップモデルだったらしい。
僕は母親のことを知らない。
僕を産む時に彼女は死んでしまったから。
父親の手伝いで子供のときから時々モデルをやってた。
自分でいうのもなんだけど、母親譲りの白い肌に優しい印象を与える瞳で、本格的にモデルやっていってもいけるとは思う。
でも僕は父親の血のほうが濃いようで。
いつからか自分の理想のモデルを捜し求めるようになっていた。
それはまるで蒼い鳥を探すような感覚。
存在しないと思っていた。
僕の理想そのもの、なんて―――。
「潤くん!潤くん!」
ばたばたと騒がしくこちらに近寄ってくるのが僕の蒼い鳥、アイジ。
外見はまさに僕の理想通り。
細く長い手足に大きな瞳。「綺麗」という表現が一番合う。
ただあくまで外見のこと。
性格は・・・一言で言えば「子供」だ。
「俺ねー、筋がいいって誉められた」
綺麗な顔をくしゃくしゃにして本当に嬉しそうに笑うアイジ。
思わず髪の毛をわしゃわしゃと撫でてやりたくなる。
でもせっかく綺麗にセットされた髪を台無しにしてしまうわけにはいかない。
「当然でしょう。僕が選んだモデルなんだから」
灰皿を引き寄せ、煙草の灰を落とす。
「でもあのカメラマンさん、あんまり誉めない人なんだよ。すごいね、アイジ」
そう言って微笑んだ僕に、アイジは飛びついてきた。
「ありがとう、潤くん!」
「ちょっ・・・危ないだろ!」
「俺、撮影の続きやってくる!終わるまで待っててねー!!」
そう言うとアイジはまたばたばたと走り去っていってしまった。
ほ、と安堵の息をつき、煙草の火を消す。
モデルが火傷でもしたら大変だ。
「犬みたいだよなぁ・・・」
呟いて、くくく、と笑う。
外見はもちろん、あの性格だって嫌いじゃなかった。
* * * * *
アイジは持ち前の人懐っこさで、どんどんモデル業界でも顔を広げていった。
僕はほぼアイジのマネージャーになっている。
今は何よりこの仕事が楽しかった。
コンコン。
軽くドアをノックする。
「潤です」
『入れ』
「失礼します」
僕はドアを開けて「社長室」と書かれた部屋に入った。
当然そこには僕の父が座っている。
だがここ数年、父とは仕事以外での付き合いはしていなかった。
「ご用事があると伺いましたが・・・」
「ああ、この仕事をお前のモデルに頼みたいと思ってな」
そう言い、1枚の書類が僕に渡される。
それは有名ブランドの専属モデルの話だった。
悪くない話だ。むしろアイジにとってはモデルとしての地位を確立するまたとない機会だ。
だが、僕は何故かすぐに返事をすることができなかった。
「・・・何か不都合でもあるか?」
「ない、です・・・」
マネージャーが僕でなくなること以外は。
僕はその言葉をぐっと飲み込んだ。
仕事に私情は挟むべきではない。
アイジはもう僕だけの蒼い鳥ではないんだ。
「じゃあ、さがれ」
「失礼します・・・」
そんなこと、はじめから理解っていたはずなのに。
いつの間に僕はアイジを手に入れた気になっていたのだろう?
それから数日間は大変だった。
アイジが僕がマネージャーをやらないと仕事を受けないと言い張ったのだ。
勿論そんな我儘が仕事上において通用するはずがない。
それに理由が無かった。僕でならない理由が。
ほぼ絶縁に近い状態で僕の仕事は終わった。
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蒼い鳥を
「理由ならあるよ!潤くんじゃいけない理由なら!」
「なんだよ、言ってみろよ?!」
「だから、それはっ・・・!!」
「言えないじゃないか。そんなのは理由にならないんだ!」
「潤くん!!」
逃がしちゃったよ・・・
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しばらくは何もせずに過ごしていた気がする。
すでにモデルの仕事は手放していたし、特にマネージメントしたいと思えるほどのモデルにも出会えなかった。
街中でアイジのポスターを見つけては、その強い瞳から逃げるように目を背けた。
だって何と言えばいい?
この感情に名前をつけられるか?
つけたとしたら、それは・・・。
アイジの未来をも犠牲にすることになる。
僕は広い空へ飛び立つ蒼い鳥を見上げているだけでいい。
もう二度と僕の空へ戻ってこなくても。
「何ですか?社長」
「その中から、ひとり選べ」
デスクの上に散りばめられた写真たち。
その中で笑う、人、人、人。
「僕にマネージメントをしろ、と?」
「そうだ」
「・・・こんなの・・・」
だんっ!
僕は叩くようにして写真を床に投げ捨てた。
「アイジに比べたらゴミ以下だ」
そのまま部屋を飛び出す。
「潤!!」
わかってる。
仕事に私情は挟んじゃいけない。
わかってる。
アイジは僕だけの蒼い鳥じゃない。
わかってる。
僕はアイジのことを・・・。
「・・・すき、だって・・・」
わかってる。
何故だか涙が止まらなかった。
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